アニブロ

動物プロダクションのお仕事☆撮影現場の様子を少しだけお見せします!

アニマルプランニングは動物プロダクションとして、様々なお仕事に関わらせていただいています。

しかし、ライセンスの関係上、その内容を公に出来ないものが多くあります。例えば、TV・映画・CM・雑誌・広告などの撮影全般・テーマパークアトラクションの監修・演出・キャスト出演など、その分野は多岐に亘ります。

そこで今回、「動物プロダクションって何をしているの? 動物たちは大丈夫なの?」といった、世間から見たら全く馴染みのない「謎の業務内容」について、生々しい撮影現場のお話と共に、可能な範囲でお伝えしたいと思います。

まずは何が出来るかを考える

先日、NHK大阪局「歴史秘話ヒストリア」内での再現ドラマのパートへの出演ご依頼をいただき、実際にスタジオで撮影して来ました。

先ず、ご依頼の段階で、脚本や演出の大まかな流れを確認すると、「戦国武将が鷹を献上するシーンで、本物の鷹を使いたい」とのことだったので、情報を下記のように整理します。

① 動物種:鷹
② 地域 :日本(近畿地方)
③ 年代 :戦国時代(1500年代)
④ 設定 :武将が良い鷹を織田信長に献上する。
⑤ 方法 :鷹匠が鷹を連れて来て直接見せる。
⑥ シーン:鷹を見ながら会話のやり取りが行われていく。

次に、これらを順を追って考えて、

会話のやり取りがあっても物怖じしない[⑥]手に据えた状態で[⑤]信長に献上するに値する[④]戦国時代に[③]日本で見られてもおかしくない[②]誰もが羨む鷹[①]

に相応しい種類と個体を選定します。

(※詳しくは書けないので内緒ですが)上記以外にも、現場の状態・スタジオ内の設備・撮り方・演出の方向性など、様々な考察を経て、今回はシロオオタカの神弓姫(かぐら)に選定しました。

そして今回は「⑤ 鷹匠が鷹を連れて来て直接見せる」とのことなので、鷹匠役として、キャストが鷹を持つ必要があります。とは言え、一般の人間がいきなりシロオオタカを持てるはずもなく、今回はアニマルプランニングのトレーナーが、実際の鷹匠役でキャスティングされることとなりました。

というのも、実はアニマルプランニングには俳優のスキルも持ち合わせているトレーナーも居ます。実際に、シーンに入り込むことによって、動物の見せ方を自分たちでコントロール出来るので、より安心して役割に従事できるのが特徴です。

こうして、動物の選定、小道具、衣装、演出、キャストのかつら合わせ、現場の温湿度や、待機場所の環境、搬入経路など、様々な打ち合わせと確認を経て、ようやく現場入りの当日を迎えることが出来ます。

さあ、いよいよ現場入り

今回、キャスト(トレーナー)は時代劇の扮装を行います。そこで、かつらの状態(今回は烏帽子も)・衣装・小道具が、鷹を据えて芝居することに影響がないかどうかを改めて確認します。

実際の撮影現場には、撮影用の大きな照明器具や、大きなカメラやクレーンカメラ、ガンマイクなど、たくさんの設備機材があります。そして、シーンの合間にはそれらが移動し、美術などの建て込みで大きな音が起こることもあります。もちろんそれらに付随して、たくさんの人がそれぞれの役割に従事しています。

そのような環境を確認し、音や光、温度や湿度、近くに危険な物はないかなど、動物たちの安全を図るのも私たちのお仕事です。

しかし、逆にそれらが他の方へ影響を与えないように注意も払わなければなりません。例えば、音声収録中に鷹がバタついたりしてしまうことで、NGとなってしまいます。また、演者さんの集中力を削いでしまうことにもなり兼ねません。それらは作品のクオリティにも直結してしまうので、十分な配慮が必要となります。

また、今回は「時代劇×キャスト×鷹」ということもあり、気を付けた点がいくつかあります。

① 鷹が羽ばたいた際に、かつらや烏帽子に当てない
② 翼のこすれで、メイクを落とさない
③ 台詞のやり取り中は、羽ばたきの音をさせない
④ 鷹がフンをする際、衣装や他の人にかけない
⑤ 演出や時代劇の所作を保ちつつ、鷹の据えを維持する

など、普段の鷹の据え方とは違ったスキルが必要となります。

他にも、美術セットへの配慮や、時代劇の衣装を着ながらの鷹の据えなど、日常では起こり得ないシチュエーションが盛り沢山。それらの要素が、鷹にとってストレスにならないかどうかの配慮を行うことも、プロダクショントレーナーのお仕事です。

必要な能力は「臨機応変力」

実際の撮影現場には独特の雰囲気があります。特に今回はコロナウィルス感染拡大防止の観点からも、マスクやフェイスガードの着用義務があったりと、普段以上に緊張感が高まっています。

撮影現場には、様々な人が作品作りに従事しています。今回はキャストとしての出演もあるため、時代劇の所作指導や、演技に対する演出も入ってきます。

先ずは、鷹を腕に乗せたつもりでドライラン(そのシーンを流れを通してみる)。その時にどのような芝居が求められるのかを確認します。ドライランが終わったら、そのシーンをカット割りしていきます。

このカット割りを作っていく際に、

・どの位置にカメラが来るのか
・その時に何を撮るのか
・どのように映り込むのか
・その際の照明位置
・他の演者の位置
・自分のセリフの有無
・他の演者のセリフの有無
・ガンマイクやクレーンカメラの位置

などなど、あらゆることを見て、どの状態が作品とって、動物にとってベストなのかを把握しておきます。

そうこうしているうちに、いよいよ鷹が出て来るシーンが回ってきます。

まずは、テスト撮り(リハーサル)。実際に鷹を腕に乗せた状態で先ほどのお芝居を演じてみます。歩き方や、曲がり方、座り方に至るまで、時代劇特有の所作を維持しつつ、鷹を据えながら演技をします。

また、衣装の状態や、かつらの状態、烏帽子の高さ、小道具の位置など、自分自身の環境にも気を配ります。何故なら、鷹を持っている為に、他のスタッフがキャスト(トレーナー)に近付けない為、手直しが行いにくいからです。なるべく、着物が着崩れないように、かつらの毛を逆立てないように、常に気を付けながら過ごします。

実際のカット割りでは、前述したとおり、

・どこにカメラがあり、そのフレーム(画角)はどれくらいなのか
・その時、鷹はどう映り込むのか

などを把握しながら、なるべく鷹が美しく魅せられるように工夫をして、持っている鷹の高さや向きなどを微調整しながら据えます。且つ、自身も鷹に集中するあまり、演技が現代人になってしまわないように充分配慮します。

このようにして、鷹にとって、作品にとって、なるべく美しく魅せられるよう、次々とカットを撮影していきます。

本番を終えて

メイク、かつら、衣装、小道具、所作など、人間だけの演技でも気を使うことの多い時代劇。フンをするタイミングに意識を集中したり、クレーンカメラや、近距離でのカメラや照明に配慮しながら、且つセリフのシーン中には鷹を羽ばたかせないように、少しでも音が入ればNGとなってしまう、そんな中での収録は求められるスキルが特殊なものばかりで、とても緊張します。

人にとって、動物にとって安全であり、倫理(ガイダンス)の上でも、安心した撮影現場を提供するために、私たちは様々なスキルを必要としています。

動物のプロ×撮影のプロとして、また、歴史の知識や、動物の見せ方の工夫、動物が引き立つように魅せる演技スキルや、場合によっては演出・監修のスキル、動物の健康面、安全面、衛生面まで、その必要とされるスキルは多ジャンルに及びます。

今回は、普段あまりお伝えすることのない動物プロダクションの撮影現場の雰囲気を少しだけ載せさせていただきましたが、いかがでしたか?

実際にどのように編集されるのかは、私たちも放送を見てみなければ分かりません。是非「歴史秘話ヒストリア」をチェックしてみて下さいね。

放送日
2020年11月11日(水) 午後10時30分~ 午後11時15分

NHK総合 歴史秘話ヒストリア
「近衞前久 型破り関白 戦国と闘う」

https://www4.nhk.or.jp/historia/x/2020-11-11/21/2831/1458449/